後半 (最悪の日に)


          5月10日(水) 

仕事帰りの5時過ぎ。太陽のひざしはとても強く、夕方とは思えないくらいだった。こんないい天気なのに、家に帰って部屋にいるのは勿体ないと思った。ここ最近、家から離れたブルガス近隣のフィールドばかりで遊んでいたので、久しぶりに家近くの畑地帯に行ってみることにした。
 

 

1ヶ月ぶりくらいに訪れた近所の小川は、草が茫々に生えていた。カエルの気配はわかるけれど、川岸にびっしりと生えた植物のお陰で姿がまったく見えない。先月探しておいた、カエルを観察しやすいポイント3,4ヶ所すべてを回ってみたけれど、どこも同じ状況。
 

植生の変わっている
右側は湿地帯

 

RekaTyarTreva.jpg (27863 バイト) 小川をあきらめて、トカゲの原っぱに行ってみる。そこも、先月とは様子が変わって、やはり草が茫々になっていた。例のトカゲの巣もよく観察できない程だ。先月の草が少ない時期でさえ、あれほど手こずったトカゲ探し。この状況を見ては、トカゲを追いかける気は失せた。

今日は、原っぱを越えてさらに進み、小川の上流部と思われる湿地を探索してみた。が、どこもかしこも草だらけだ。ショウブのような植物が水辺一面に生えていて、動物を見つけ出すのはむずかしかった。

 
もう2時間は探し歩いていただろうか。見たものと言えば、1個体カエルの姿を一瞬だけ。他には、なんにも見つけられないでいた。
 
「こういう日もあるよなぁ」

折り返して、帰ることにした。帰り際にも、川沿いを歩き、最後になにか現れないかなぁと期待していた。その時、反対岸に妙な赤い植物を見つけた。はっきり見えないが、珍しい植物に感じた。

 

反対岸に渡るには、あと50mほど先にある小さな橋まで行き、橋を渡り、50mまた戻ってこなければならない。なんだかひどく遠くに感じた。 目の前の川幅は3メートルほど、しかも水はまったく流れていなく、腐った植物が積もり、表面は乾いて見える。
 

「これ、歩いて渡れるのでは!?」

そう思った。一足一足、ゆっくりと確かめるように腐植物の上を進む。2歩、3歩、、、、少し柔らかいが、行けそう! 4歩、5歩、と先に進もうとした途端、足が川に飲み込まれた。
 

カメラは無事に守ったものの、すねから下のズボン・靴下・靴はドロドロの状態。最悪。

こんなになってまで、なんとか渡った反対岸。見えていた妙な植物は、葉っぱが変な形に枯れて赤くなっていただけだった。さらにガッカリ。
 

泥にハマった自分の足

KrakataMi.jpg (32383 バイト)

 

こんな日に思い起こしたのが、ジム・ブランデンバーグの文章の一節

 

─ その日はなかなか撮りたいものが見つからず、絶望的な気分に陥っていた。雨だれのしたたる森を1日中歩き回って疲れ果て、そのうえ空腹で、体も濡れ、泣きたい気分だった。 ・・・・(省略)・・・・ だが、そうした救いのない状況の中で、辛抱強く神経を集中させ続けたおかげだろう。 ・・・・(省略)・・・・ 幻覚の中に守護霊を見るように、私は新たな可能性を見出した。 

 

(NATIONAL GEOGRAPHIC 日本語版1997年11月号 「北の森から 90日間の撮影記録」より抜粋)

 

 

 いつも、足元の生物にだけ神経を集中させて歩いている。
この日、自分の周りの風景に目をやってみた。
動物が見つからなく、泥にハマり落ち込んでいたのだけれど、周囲の自然の綺麗さに驚いた。
気がついて見てみると、美しいものは周りにたくさんあるのだった。
 

 

 

 

JimBrandenburg-1.jpg (12952 バイト) JimBrandenburg-2.jpg (16517 バイト) JimBrandenburg-3.jpg (14852 バイト)
水溜まりと畑と太陽    午後7:23 アシみたいな植物と空    午後7:47 麦畑の夕暮れ    午後8:18

 

 


写真: 後半 (最悪の日に) 終わり


 

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[2001.5.26 作成]
[2001.6.19 記事の真似して撮影時刻追記]

 

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